リベット留めスーツキャス用おもちゃ用リベット留め荷物用100個ソリッドリベットステンレス鋼刻み付きシャンクリベットM2 【65%OFF!】 M2 期間限定 最安値挑戦 6

リベット留めスーツキャス用おもちゃ用リベット留め荷物用100個ソリッドリベットステンレス鋼刻み付きシャンクリベットM2(M2*6)

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439円

リベット留めスーツキャス用おもちゃ用リベット留め荷物用100個ソリッドリベットステンレス鋼刻み付きシャンクリベットM2(M2*6)

商品の説明

機能:"span"100%真新しく高品質。これらのリベットはステンレス鋼でできており、耐久性があり、錆びにくいです。必要に応じて選択できるいくつかの異なるサイズがあります。
各セットには、多くのプロジェクトで使用できる合計100個のリベットが含まれています。スーツケース、おもちゃ、ハードウェアツールなどの固定とリベット留めに広く使用されています。

"span"

仕様:

"span"材質:ステンレス鋼

"span"数量サイズ(シャンク径*シャンク長さ)(オプション"span"):

"span"100個M2 * 3

"span"100個M2 * 4

"span"100個M2 * 5

"span"100個M2 * 6

"span"100個M2 * 8

"span"100個M2 * 10

"span"100個M2 * 12

"span"重量:15g〜36g/0.5oz〜1.3oz(約)

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パッケージリスト:"span"
1セット*リベット

リベット留めスーツキャス用おもちゃ用リベット留め荷物用100個ソリッドリベットステンレス鋼刻み付きシャンクリベットM2(M2*6)

吉岡幸雄 『日本の色辞典』

「しかしながら、草木の葉がもつ葉緑素という色素は脆弱で、水に遭うと流れてしまう。しかも、時が経つと汚れたような茶色に変色してしまう。染料、顔料といった着色剤としては用をなさないのである。
 自然界でそのまま緑の色を着色できるのは、唯一、銅の化合物である緑青(ろくしょう)という顔料だけである。」

(吉岡幸雄 『日本の色辞典』 「緑系の色」 より)


吉岡幸雄 
『日本の色辞典』
 


紫紅社 
2000年6月20日 第1刷発行 
2001年12月15日 第3刷発行 
302p 
A5判 丸背紙装上製本 カバー 
定価2,800円(税別) 
企画・編集: 槇野修 
染色: 染司よしおか 福田伝士
 


本書「はじめに」より: 

「季節を待って咲く花に、土にあって深くのびている根に、枝に実る果実に、さらには樹皮の内側の肌に、と、ひそんでいる自然界の色素を汲み出すようにして、糸や布や紙を染めることを、私は生業(なりわい)としている。」
「私の仕事はいわば、明治になって日本に化学染料がもたらされるまでの、万葉から江戸時代の終わりまでの染職人が行なっていた、自然の植物から日本の色を出す業をたどるものである。」
「日本の伝統色を、自然の恵みから得た染料や顔料をもとに、技法もいにしえの無名の職人たちに学びながら再現したのが本書である。
 色名にまつわる逸話や知見も、あるときは先人がのこした歌や物語に拠り、またあるときは先達の研究を参照しつつ、染場で私なりの、また、「染司よしおか」の練達の染師福田伝士氏の体験をまじえながら綴ったものである。」



本書「著者註記」より: 

「●本書は、日本の伝統色のうち二百九色を中心に、また、近年身近で用いられるようになった外国の色名も含め、三百七十九種の色名を取り上げて解説するものである。」
「●三百七十九色のうち、本文で解説した二百九色の伝統色については、一部をのぞき、すべて天然の染料で絹布を染め、もしくは天然の顔料(岩絵具)を和紙に塗って再現した色見本を付した。」
「●色見本は、実際の染め見本から直接製版し、補色を用いながらできる限り染色に近付けて印刷したものだが、実物との若干の差異がある。」
「●巻末に、色名および襲の色目に関する索引を付した。」



本文中にカラー図版多数。表紙(カバー)は「艶紅染」です。







目次: 

赤系の色 
 朱色 しゅいろ 
 真朱 まそほ しんしゅ 
 洗朱 あらいしゅ 
 弁柄色 べんがらいろ 
 代赭色 たいしゃいろ 
 赤銅色 しゃくどういろ 
 珊瑚色 さんごいろ 
 煉瓦色 れんがいろ 
 蒲色 樺色 かばいろ 
 茜色 あかねいろ 緋 あけ 
 深緋 こきあけ 
 紅葉色 もみじいろ 
 朱紱 しゅふつ 
 纁 そひ 
 曙色 あけぼのいろ 東雲色 しののめいろ 
 紅 くれない べに 
 搔練 かいねり 
 紅絹色 もみいろ 
 艶紅 つやべに ひかりべに 
 深紅 ふかきくれない 
 韓紅 唐紅 からくれない 
 今様色 いまよういろ 
 桃染 ももぞめ つきぞめ 
 撫子色 なでしこいろ 
 石竹色 せきちくいろ 
 桜色 さくらいろ 
 桜鼠 さくらねずみ 
 一斤染 いっこんぞめ 聴色 ゆるしいろ 
 退紅 たいこう 粗染 あらぞめ 
 朱華 はねず 
 紅鬱金 べにうこん 
 橙色 だいだいいろ 
 赤香色 あかこういろ 
 支子色 梔子色 くちなしいろ 
 牡丹色 ぼたんいろ 
 躑躅色 つつじいろ 
 朱鷺色 鴇色 ときいろ 
 小豆色 あずきいろ 
 羊羹色 ようかんいろ 
 赤朽葉 あかくちば 
 赤白橡 あかしろ(ら)つるばみ 
 蘇芳色 すおういろ 
 紅梅色 こうばいいろ 
 黄櫨染 こうろぜん 
 柿色 かきいろ 
 黄丹 おうに おうだん 
 萩色 はぎいろ 
 臙脂色 えんじいろ 
 猩々緋 しょうじょうひ 
 その他の赤系の色 

紫系の色 
 深紫 こきむらさき 黒紫 ふかきむらさき 
 帝王紫 ていおうむらさき 
  貝紫 かいむらさき 
 古代紫 こだいむらさき 
  京紫 きょうむらさき 
 江戸紫 えどむらさき 
 半色 はしたいろ 中紫 なかのむらさき 
 浅紫 あさむらさき 薄色 うすいろ 
 紫鈍 むらさきにび 
 滅紫 けしむらさき 
 藤色 ふじいろ 藤紫 ふじむらさき 
 藤布 
 杜若色 かきつばたいろ 
 菖蒲色 あやめいろ しょうぶいろ 
 楝色 おうちいろ 
 菫色 すみれいろ 
 葡萄色 えびいろ 
 紫苑色 しおんいろ 
 藤袴色 ふじばかまいろ 
 桔梗色 ききょういろ 
 二藍 ふたあい 
 似紫 にせむらさき 
 茄子紺 なすこん 
 紺青色 こんじょういろ 
 脂燭色 しそくいろ 
 その他の紫系の色 

青系の色 
 藍 あい
 藍染の色 二趣 
 紺 こん 
 縹色 花田色 はなだいろ 
 青黛 せいたい 
 浅葱色 あさぎいろ 
 水浅葱 みずあさぎ 
 水色 みずいろ 
 甕覗 かめのぞき 
 褐色 かち(ん)いろ 青黒 あおぐろ 
 鉄紺色 てつこんいろ 
 納戸色 なんどいろ 
 藍鼠 あいねず 
 青鈍 あおにび 
 露草色 つゆくさいろ 花色 はないろ 
 山藍摺 やまあいずり 青摺 あおずり 
 空色 そらいろ 
 群青色 ぐんじょういろ 
 瑠璃色 るりいろ 
 その他の青系の色 

緑系の色 
 柳色 やなぎいろ 
 裏葉色 うらはいろ 
 木賊色 とくさいろ 
 蓬色 よもぎいろ 
 緑色 みどりいろ 
 青緑 あおみどり 
 若竹色 わかたけいろ 
 青竹色 あおたけいろ 
 萌黄色 もえぎいろ 
 鶯色 うぐいすいろ 
 鶸萌黄 ひわもえぎ 
 鶸色 ひわいろ 
 千歳緑 ちとせみどり せんざいみどり 
 常磐色 ときわいろ 
 松葉色 まつばいろ 
 若菜色 わかないろ 
 若苗色 わかなえいろ 
 若草色 わかくさいろ 
 苗色 あねいろ 
 麴塵 きくじん 青白橡 あおしろ(ら)つるばみ 
  山鳩色 やまばといろ 
 青朽葉 あおくちば 
 苔色 こけいろ 
 海松色 みるいろ 
 青磁色 せいじいろ 秘色 ひそく 
 緑青色 ろくしょういろ 
 白緑色 びゃくろくいろ 
 虫襖 むしあお 玉虫色 たまむしいろ 
 その他の緑系の色 

黄系の色 
 刈安色 かりやすいろ 
 黄蘗色 きはだいろ 
 鬱金色 うこんいろ 
 山吹色 やまぶきいろ 
 黄支子色 きくちなしいろ 
 柑子色 こうじいろ 
 安石榴色 ざくろいろ 
 朽葉色 くちばいろ 
 黄朽葉 きくちば 
 黄橡 きつるばみ 
 女郎花色 おみなえしいろ 
 萱草色 かんぞういろ 
 波自色 櫨色 はじいろ 
 菜の花色 なのはないろ 
 楊梅色 山桃色 やまももいろ 
 卵色 たまごいろ 
 承和色 そがいろ 
 黄金色 こがねいろ 
 芥子色 からしいろ 
 黄土色 おうどいろ 
 雌黄 しおう 
 その他の黄系の色 

茶系の色 
 唐茶 からちゃ 
 樺茶 かばちゃ 
 団栗色 どんぐりいろ 
 榛摺 はりずり 
 柴染 しばぞめ ふしぞめ 
 阿仙茶 あせんちゃ 
 檜皮色 ひわだいろ 
 肉桂色 にっけいいろ 
 胡桃色 くるみいろ 
 柿渋色 かきしぶいろ 
 栗色 くりいろ 落栗色 おちぐりいろ 
 栗皮色 くりかわいろ 
 桑染 くわぞめ 
 白茶 しらちゃ 
 鳥の子色 とりのこいろ 
 生壁色 なまかべいろ 
 砥粉色 とのこいろ 
 木蘭色 もくらんいろ 
 香色 こういろ 丁子色 ちょうじいろ 
 蟬の羽色 せみのはねいろ 
 一位色 いちいいろ 
 錆色 さびいろ 
 亜麻色 あまいろ 
 生成色 きなりいろ 
 苦色 にがいろ 
 象牙色 ぞうげいろ 
 江戸茶 えどちゃ 
 路考茶 ろこうちゃ 
 璃寛茶 りかんちゃ 
 梅幸茶 ばいこうちゃ 
 団十郎茶 だんじゅうろうちゃ 
 芝翫茶 しかんちゃ 
 土器茶 かわらけちゃ 枇杷茶 びわちゃ 
 枯茶 かれちゃ 
 媚茶 こびちゃ 
 焦茶 こげちゃ 
 褐色 かっしょく 
 金茶 きんちゃ 
 鳶色 とびいろ 
 訶梨勒 かりろく 
 杉色 すぎいろ 
 葡萄茶 えびちゃ 
 琥珀色 こはくいろ 
 雀茶 すずめちゃ 
 煤竹色 すすたけいろ 
 四十八茶百鼠 
 その他の茶系の色 

黒・白系の色 
 鈍色 にびいろ 
 橡色 つるばみいろ 黒橡 くろつるばみ 
 檳榔樹黒 びんろうじゅぐろ 
 憲法黒 けんぽうぐろ 
 梅染 うめぞめ 
 紅下黒 べにしたぐろ 
 藍下黒 あいしたぐろ 
 空五倍子色 うつぶしいろ 
 お歯黒 
 墨 すみ 
 呂色 ろいろ 蠟色 ろういろ 
 鼠色 ねずみいろ 
 灰色 はいいろ 
 涅色 すみいろ 皂色 くりいろ 
 銀鼠 ぎんねず 
 丼鼠 どぶねずみ 
 利休鼠 りきゅうねずみ 
 深川鼠 ふかがわねずみ 
 藤鼠 ふじねずみ 
 鳩羽鼠 はとばねずみ 
 白土 はくど 
 胡粉 ごふん 
 卯の花色 うのはないろ 
 雲母 きら 
 氷色 こおりいろ 
 その他の黒・白系の色 

金・銀系の色 
 金色 きんいろ 
 白金 はっきん 
 銀色 ぎんいろ 

日本の色を深く知るために 
 色をあらわす材料 
 五行思想 
 位と色について 
 『延喜式』 
 襲の色目 

索引 
主な参考文献
 



◆本書より◆ 


「二藍 ふたあい」より: 

「藍(あい)に紅花(べにばな)を掛け合わせて染めた紫系の色で、それぞれの染料の濃度によってさまざまな色相があらわされる。
 日本の染色の技術は、五世紀、大和の国にようやく統一政権が誕生した頃より、中国および朝鮮半島との交流が盛んになって、飛躍的に進歩した。 
 『日本書紀』の応神天皇三十七年には、「阿知使主・都加使主を呉(くれ)に遣して、縫工女(きぬぬいひめ)を求めしむ。…… 呉の王(こきし)、是に、工女(ぬいめ)兄媛(えひめ)・弟媛(おとひめ)、呉織(くれはとり)、穴織(あなはとり)の四(よたり)の婦女(おんな)を与ふ」とあるように、すでに呉の国はなかったが、呉と通交して以来、わが国では呉は中国の意にも用いられ、中国伝来のものに冠せられたりしていたのである。
 加えて、藍染や赤い紅花、艶やかな紫など鮮やかな色彩を染める技と、それに用いる染料植物ももたらされるようになった。そのため紅花を、呉の藍、すなわち呉の国からやってきた藍ということで「くれのあい」といいあらわしている。
 赤い色を出す染料であるのに、呉藍、紅藍と「藍」を用いるのは、藍は染料を総称する言葉でもあったからである。そうしたところから、蓼藍(たであい)(青)と呉藍(紅花、赤)という二種類の藍(染料)を掛けてあらわす紫系の色を、いつの頃からか二藍(ふたあい)と呼称するようになった。」



「四十八茶百鼠」より: 

「江戸時代の初期、寛永・寛文の時代をすぎたあたりから、天下太平を謳歌した元禄時代にかけて、江戸、京、大坂といった大きな都市における町人の繁栄振りには眼を見張るものがあった。」
「町人たちは富を築くとともに、公家や武家のような贅沢な暮らしを目指すようになり、衣服にもその兆しはあらわれた。」
「幕府は奢侈(しゃし)禁止令をたびたび出して、庶民の華美、贅沢を禁じた。紅、紫、金糸銀糸、総鹿の子などの華やかな衣裳を着てはならないというお触れを出したのである。
 富める町人たちはそれをやむなく受け入れ、幕府の禁令に対して、茶や黒、鼠系統の地味な色合の縞や格子、小紋染の着物など、表向きには目立たないものを着るようになっていった。
 だが、茶や黒にもさまざまな変化をつけたのである。そして、それぞれの色に、当時人気の歌舞伎役者、歴史的人物、風月山水などあらゆるものからゆかりのある名前をとってつけ、その微妙な色相の変化を楽しんだようである。
 その数は、「四十八茶百鼠」といわれるように、茶色には四十八、薄墨から墨にいたっては百もの色があったという。実際にそれだけの数があったのかどうか詳らかではないが、それほど多かったということなのだろう。」
「江戸時代の人が、元禄をすぎた頃より、幕府の禁令にそむくことなく、粋なお洒落として、こうした茶・黒系の色を基調に、縞・格子、小紋などの着物を好んだことは確かではあるが、その頃でも裏地には、女性なら鮮やかな紅絹(もみ)をつけたり、男性なら羽織の裏に描絵をほどこしたり、インドやヨーロッパから舶載された手に入りにくい裂を使うなど、見えないところに華麗な色や意匠を凝らしていたことも忘れてはならない。
 「裏優(うらまさ)り」といわれ、庶民の心意気と反骨心をあらわすものだろう。」

















こちらもご参照ください: 

文:高橋順子/写真:佐藤秀明 『雨の名前』






















































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『井原西鶴集 二』 宗政五十緒・松田修・暉峻康隆 校注・訳 (日本古典文学全集) 

「欲は人の常なり、恋は人の外(ほか)なり。」
(井原西鶴 『本朝二十不孝』 「人はしれぬ国の土仏」 より)


『井原西鶴集 二』 
宗政五十緒・松田修・暉峻康隆 校注・訳
 
日本古典文学全集 39 


小学館 
昭和48年1月31日 初版第1刷発行 
619p 口絵(カラー)12p 
菊判 丸背バクラム装上製本 貼函 
¥1,500

月報 24 (8p):
〈対談〉西鶴の魅力(暉峻康隆/ドナルド・キーン)/連載・古典文学の背景11 世話変遷灯火俤――照明具覚え書(中村義雄)/『西鶴諸国ばなし』のなかの私(宗政五十緒)/ポント考――『本朝二十不孝』語釈の試み(松田修)/校注・訳者略歴/編集室より/図版(モノクロ)5点。



本書「凡例」より: 

「本書には、西鶴浮世草子中、中期の代表作品、『西鶴諸国ばなし』『本朝二十不孝』『男色大鑑』を収めた。本文作成にあたっては、挿絵(さしえ)のすべてを、本文該当個所に収めた。底本には、(中略)最も信頼できるものを選び、さらに諸本を参照しつつ、正しい本文づくりに努めた。」
「読みやすい本文づくりの観点から、原文にある漢字→仮名、仮名→漢字の操作を行なった。「其(その)・此(この)・也(なり)」などは、すべて「その・この・なり」に改めた。」
「旧字体を新字体に改めた。」
「あて字・誤字の類は、原則として、正字に改めた。」
「異体字は、原則として、通行字体に改めたが、ニュアンスの汲みとれる「泪(なみだ)」などについては残した。」
「歴史的仮名づかいに統一することを原則とした。」
「句読点は、読みやすさへの配慮にもとづき、本文の語調を生かしつつ施した。」
「段落も、読みやすさへの配慮から、適宜、新たに設けた。」



井原西鶴集全三冊のうちの「二」。本文三段組(頭注・本文・現代語訳)。
口絵図版(カラー)7点。挿絵図版94点、その他図版22点。参考図版66点。







目次: 

解説 
 一 西鶴中期の作風 (暉峻康隆) 
 二 作品解題 
  西鶴諸国ばなし (宗政五十緒) 
  本朝二十不孝 (松田修) 
  男色大鑑 (暉峻康隆) 
 三 西鶴作品における漢字の字体とその用法およびかなづかい (杉本つとむ)
 
凡例 

西鶴諸国ばなし (宗政五十緒 校注・訳) 
 巻一 
  一 公事(くじ)は破らずに勝つ 奈良(なら)の寺中(じぢゆう)にありし事 知恵(ちゑ) 
  二 見せぬ所は女大工(をんなだいく) 京(きやう)の一条(いちでう)にありし事 不思議(ふしぎ) 
  三 大晦日(おほつごもり)はあはぬ算用(さんよう) 江戸(えど)の品川(しながは)にありし事 義理(ぎり) 
  四 傘(からかさ)の御託宣(ごたくせん) 紀州(きしう)の掛作(かけづくり)にありし事 慈悲(じひ) 
  五 不思議(ふしぎ)のあし音(おと) 伏見(ふしみ)の問屋町(とひやまち)にありし事 音曲(おんぎよく) 
  六 雲中(うんちゆう)の腕(うで)押し 箱根(はこね)山熊谷(やまくまだに)にありし事 長生(ちやうせい) 
  七 狐(きつね)の四天王(してんわう) 播州(ばんしう)姫路(ひめぢ)にありし事 恨(うらみ) 
 巻二 
  一 姿(すがた)の飛び乗物(のりもの) 津(つ)の国の池田(いけだ)にありし事 因果(いんぐわ) 
  二 十二人の俄坊主(にはかばうず) 紀伊(きい)の国阿波島(あはしま)にありし事 遊興(いうきやう) 
  三 水筋(みづすぢ)の抜け道 若狭(わかさ)の小浜(おばま)にありし事 報(むくい) 
  四 残る物とて金の鍋(なべ) 大和(やまと)の国生駒(いこま)にありし事 仙人(せんにん) 
  五 夢路(ゆめぢ)の風車(かざぐるま) 飛騨(ひだ)の国の奥山にありし事 隠里(かくれざと) 
  六 楽(たの)しみの男地蔵(をとこぢざう) 都(みやこ)北野(きたの)の片町(かたまち)にありし事 現遊(げんいう) 
  七 神鳴(かみなり)の病中(びやうちゆう) 信濃(しなの)の国浅間(あさま)にありし事 欲心(よくしん)
 巻三 
  一 蚤(のみ)の籠抜(かごぬ)け 駿河(するが)の国府中(ふちゆう)にありし事 武勇(ぶゆう) 
  二 面影の焼残(やけのこ)り 京上長者町(かみちやうじやまち)にありし事 無常(むじやう) 
  三 お霜月(しもつき)作(つく)り髭(ひげ) 大坂(おおざか)玉造(たまつくり)にありし事 馬鹿(ばか) 
  四 紫女(むらさきをんな) 筑前(ちくぜん)の国博多(はかた)にありし事 夢人(むじん) 
  五 行末(ゆくすゑ)の宝舟(たからぶね) 諏訪(すは)の水海(みづうみ)にありし事 無分別(むふんべつ) 
  六 八畳敷(はちでふじき)の蓮(はす)の葉(は) 吉野(よしの)の奥山(おくやま)にありし事 名僧(めいそう) 
  七 因果(いんぐわ)の抜け穴 但馬(たじま)の国片里(かたざと)にありし事 敵打(かたきうち) 
 巻四 
  一 形は昼のまね 大坂の芝居にありし事 執心 
  二 忍び扇の長歌(ながうた) 江戸土器町(かはらけまち)にありし事 恋 
  三 命に替(か)ゆる鼻の先 高野山(かうやさん)大門(だいもん)にありし事 天狗(てんぐ) 
  四 驚くは三十七度(ど) 常陸(ひたち)の国鹿島(かしま)にありし事 殺生(せつしやう) 
  五 夢に京より戻(もど)る 泉州(せんしう)の堺(さかひ)にありし事 名草(めいさう) 
  六 力なしの大仏(おほぼとけ) 山城(やましろ)の国鳥羽(とば)にありし事 大力(だいりき) 
  七 鯉(こひ)の散らし紋 河内(かはち)の国内助(ないすけ)が淵(ぶち)にありし事 猟師 
 巻五 
  一 挑灯(てうちん)に朝顔(あさがほ) 大和(やまと)の国春日(かすが)の里にありし事 茶の湯 
  二 恋の出見世(でみせ) 江戸(えど)の麹町(かうじまち)にありし事 美人 
  三 楽しみの〓(漢字:「魚」+「摩」)〓(漢字:「魚」+「古」)(まこ)の手 鎌倉(かまくら)の金沢(かなざは)にありし事 生類(しやうるい) 
  四 闇(くら)がりの手形 木曾(きそ)の海道(かいだう)にありし事 横道(わうだう) 
  五 執心の息筋(いきすぢ) 奥州(あうしう)南部(なんぶ)にありし事 幽霊 
  六 身を捨つる油壺(あぶらつぼ) 河内(かはち)の国平岡(ひらをか)にありし事 後家(ごけ) 
  七 銀(かね)が落としてある 江戸にこの仕合(しあは)せありし事 正直 

本朝二十不孝 
 巻一 
  今の都も世は借物(かりもの) 京(きやう)悪所銀(あくしよがね)の借次屋(かりつぎや) 
  大節季(おほぜつき)にない袖(そで)の雨 伏見(ふしみ)に内証掃きちぎる竹箒屋(たけははきや) 
  跡の剝(は)げたる嫁入長持(よめいりながもち) 
  慰み改(かへ)て咄(はなし)の点取り 大坂(おほざか)に後世(ごせ)願ひ屋 
 巻二 
  我と身を焦がす釜(かま)が淵(ふち) 近江(あふみ)に悪い者の寄合屋(よりあひや) 
  旅行(りよかう)の暮(くれ)の僧にて候 熊野(くまの)に娘やさしき草の屋 
  人はしれぬ国の土仏(つちぼとけ) 伊勢(いせ)に浮浪(うきなみ)の釣針屋(つりばりや) 
  親子五人仍書置如件(よつてかきおきくだんのごとし) 駿河(するが)に分限風(ぶげんかぜ)ふかす虎屋 
 巻三 
  娘盛りの散り桜 吉野(よしの)に恥をさらせし葛屋(くづや) 
  先斗(ぽんと)に置いて来た男 堺(さかひ)にすつきりと仕舞屋(しまうたや) 
  心をのまるる蛇(じや)の形 宇都(うつ)の宮(みや)に欲のはなれぬ漆屋(うるしや) 
  当社の案内申す程(ほど)をかし 鎌倉(かまくら)にかれ/゛\の藤沢屋 
 巻四 
  善悪の二つ車 広島に色狂ひの棒組屋(ぼうぐみや) 
  枕(まくら)に残す筆の先 土佐(とさ)に身を削る鰹屋(かつをや) 
  木陰(こかげ)の袖口(そでぐち) 越前(ゑちぜん)にちり/゛\の糠屋(ぬかや)  本(ほん)にその人の面影 松前(まつまへ)に鳴かす虫薬屋(むしぐすりや) 
 巻五 
  胸こそ踊れこの盆前(ぼんまへ) 筑前(ちくぜん)に浮世にまよふ六道(ろくだう)の辻屋(つじや) 
  八人の猩々講(しやう/゛\こう) 長崎に身をよごす墨屋(すみや) 
  無用の力自慢 讃岐(さぬき)に常の身持ちならば長生きの丸亀屋(まるがめや) 
  古き都を立ち出(いで)て雨 南良(なら)に金作(きんづくり)の刀屋 

男色大鑑 
 巻一 
  一 色はふたつの物あらそひ 
  二 この道にいろはにほへと 
  三 墻(かき)の中(うち)は松楓(かいで)柳は腰付(こしつき) 
  四 玉章(たまづさ)は鱸(すずき)に通はす 
  五 墨絵(すみゑ)につらき剣菱(けんびし)の紋 
 巻二 
  一 形見は二尺三寸 
  二 傘(かさ)持つてぬるる身 
  三 夢路の月代(さかやき) 
  四 東(あづま)の伽羅(きやら)様 
  五 雪中の郭公(ほととぎす) 
 巻三 
  一 編笠(あみがさ)は重ねての恨み 
  二 嬲(なぶ)りころする袖(そで)の雪 
  三 中脇指(ちゆうわきざし)は思ひの焼け残り 
  四 薬はきかぬ房枕(ふさまくら) 
  五 色に見籠(みこ)むは山吹の盛り 
 巻四 
  一 情(なさけ)に沈む鸚鵡觴(あうむさかづき) 
  二 身替(みがは)りに立つ名も丸袖(まるそで) 
  三 待ち兼ねしは三年目の命 
  四 詠(なが)めつづけし老木(おいき)の花の頃 
  五 色噪(いろさわ)ぎは遊び寺の迷惑 
 巻五 
  一 涙の種は紙見世(かみみせ) 
  二 命乞ひは三津寺(みつでら)の八幡(はちまん) 
  三 思ひの焼付(たきつけ)は火打石(ひうちいし)売り 
  四 江戸から尋ねて俄坊主(にはかばうず)
  五 面影(おもかげ)は乗掛(のりかけ)の絵馬(ゑむま) 
 巻六 
  一 情(なさけ)の大盃(おほさかづき)潰胆丸(びつくりまる) 
  二 姿は連理(れんり)の小桜 
  三 言葉(ことば)とがめは耳にかかる人様(ひとさま) 
  四 忍びは男女(なんによ)床(とこ)違ひ 
  五 京へ見せいで残り多いもの 
 巻七 
  一 螢(ほたる)も夜(よる)は勤めの尻(しり) 
  二 女方(をんながた)もすなる土佐日記(とさにき) 
  三 袖(そで)も通さぬ形見の衣(きぬ) 
  四 恨みの数をうつたり年竹(としたけ) 
  五 素人絵(しろとゑ)に悪(にく)や釘付(くぎづ)け 
 巻八 
  一 声に色ある化物(ばけもの)の一ふし 
  二 別れにつらき沙室(しやむ)の鶏(にはとり) 
  三 執念(しふねん)は箱入りの男 
  四 小山(をやま)の関守(せきもり) 
  五 心を染めし香(かう)の図は誰 
『男色大鑑』登場役者一覧
 



◆本書より◆


序文より: 

「世間(せけん)の広き事、国々をめぐりて、はなしの種(たね)をもとめぬ。
 熊野(くまの)の奥(おく)には、湯の中にひれふる魚(うを)あり。筑前(ちくぜん)の国には、ひとつをさじ荷(にな)ひの大蕪(おほかぶら)あり。豊後(ぶんご)の大竹は手桶(てをけ)となり、若狭(わかさ)の国に二百余歳(さい)の白比丘尼(しろびくに)の住(す)めり。近江(あふみ)の国堅田(かただ)に、七尺五寸の大女房(おほにようばう)もあり。丹波(たんば)に一丈二尺の乾鮭(からさけ)の宮(みや)あり。松前(まつまへ)に百間(けん)つづきの荒和布(あらめ)あり。阿波(あは)の鳴戸(なると)に、竜女(りゆうによ)の掛硯(かけすずり)あり。加賀(かが)の白山(しらやま)に、えんま王(わう)の巾着(きんちやく)もあり。信濃(しなの)の寝覚(ねざめ)の床(とこ)に、浦島(うらしま)が火打筥(ひうちばこ)あり。鎌倉(かまくら)に頼朝(よりとも)の小遣帳(こづかひちやう)あり。都(みやこ)の嵯峨(さが)に、四十一まで大振袖(おほふりそで)の女(をんな)あり。
 これをおもふに、人はばけもの、世にない物はなし。」

「世の中はたいへん広いものである。そこで、日本の諸国を見巡って、はなしの種を求めてみた。すると――。
 熊野の奥山には、湯の中で泳いでいる魚がいる。筑前(ちくぜん)国には、一つを二人して差し担(にな)ってゆく大蕪(おおかぶら)がある。豊後(ぶんご)国の大竹はそのまま手桶(ておけ)となる大きさ、若狭(わかさ)国には二百余歳まで長生きをしている身体の白い尼が住んでいる。近江(おうみ)国の堅田(かただ)に、身長が七尺五寸の大女もいる。丹波(たんば)国に一丈二尺ある大きな干した鮭(さけ)を祀(まつ)った社(やしろ)がある。松前(まつまえ)に百間つづいた長い荒布(あらめ)がある。阿波の鳴門(なると)に、竜女が持っていた掛硯(かけすずり)がある。加賀(かが)の白山に閻魔王(えんまおう)の巾着(きんちゃく)がある。信濃の寝覚(ねざめ)の床(とこ)に浦島太郎の持っていた火打箱がある。鎌倉(かまくら)に源頼朝(みなもとのよりとも)の小遣帳がある。京都の嵯峨(さが)に四十一の年なで大振袖(おおふりそで)を着て客を引く女がいる。
 これを思うと、人間は化物(ばけもの)である。どのようなものでも、ないものは何もない、というのがこの世の中。」



「姿(すがた)の飛び乗物(のりもの)」より: 

「寛永二年、冬の初めに、津(つ)の国池田(いけだ)の里の東、呉服(くれは)の宮山(みややま)、衣掛松(きぬかけまつ)の下(した)に新しき女乗物(をんなのりもの)、誰(たれ)かは捨て置きける。柴刈(しばか)る童子(わらんべ)の見つけて町(まち)の人に語れば、大勢(おほぜい)集まりて戸(と)ざしを明けて見るに、都(みやこ)めきたる女郎(ぢよらう)の、二十二三なるが、美人といふはこれなるべし。黒髪(くろかみ)を乱して、末を金の平元結(ひらもとゆひ)を懸(か)け、肌着(はだぎ)は白く、上には、菊梧(きくぎり)の地無(ぢな)しの小袖(こそで)を重ね、帯は小鶴(こつる)の唐織(からおり)に、練(ねり)の薄物(うすもの)を被(かづ)き、前に時代蒔絵(じだいまきゑ)の硯箱(すずりばこ)の蓋(ふた)に、秋の野を写せしが、この中(うち)に御所落雁(ごしよらくがん)、煎榧(いりがや)、さま/゛\の菓子(くわし)積みて、剃刀(かみそり)かたし見えける。「御方(おかた)は何国(いづく)いかなる事にてかくお独(ひと)りはましますぞ。子細(しさい)を御物語あるべし。古里(ふるさと)へおくり帰して参らすべし」と、いろ/\尋ねけれども、言葉(ことば)の返しもなし。只(ただ)さしうつむきてまします。目つきもおそろしくて、我先(われさき)にと家にかへりぬ。」

「寛永二年の冬の初めに、摂津国池田の町の東、呉服(くれは)の宮(みや)の山の、衣掛(きぬか)け松(まつ)の下に、新しい女乗物が置いてあった。誰が捨て置いたのであろうか。柴(しば)を刈る童子(わらべ)がこれを見つけて、町の人に話すと、大勢の者達が集まって来て、戸を開けて見たところ、都の女らしい二十二、三歳の女がすわっていた。この世に美人というのは、このような女をいうのであろう。その姿はというと、乱れた黒髪の先の方を金の平元結(ひらもとゆい)で結び、肌着(はだぎ)は白く、その上に一面に菊桐(きくぎり)の模様のある小袖(こそで)を着、帯は小蔓(こづる)模様の唐織(からおり)で、練絹(ねりぎぬ)の薄物を頭にかけていた。女の前には秋の野の草花の絵を描いた時代蒔絵(まきえ)の盆に、御所落雁(ごしょらくがん)、いった榧(かや)の実などさまざまな菓子が盛られて、剃刀(かみそり)が一挺(ちょう)みえた。「あなた様はどこのお方で、どうしてこのようにお一人でいらっしゃるのですか。そのわけをお話しください。お国元へ送り返してさしあげましょう」といろいろ尋ねたが、一言の返事もない。たださしうつむいていらっしゃる。その目つきもどことなく恐ろしいので、人々は気味わるがって、我先にと家に帰ってしまった。」



「男地蔵(をとこぢざう)」より: 

「北野(きたの)の片脇(かたわき)に、合羽(かっぱ)のこはぜをして、その日をおくり、一生夢のごとく、草庵(さうあん)に独(ひと)り住む、男あり。
 都なれば、万(よろづ)の慰み事もあるに、この男はいまだ、西東(にしひがし)をも、知らぬ程の娘の子を集め、好(す)ける玩(もてあそ)び物をこしらへ、これに打ちまじりて、何の罪もなく、明暮(あけくれ)たのしむに、後(のち)には新(しん)さいの川原(かはら)と名付けて、五町(ちやう)三町の子供、ここに集まり、父母(ちちはは)をも尋ねず、遊べば親ども喜び、仏(ほとけ)のやうにぞ申しける。
 その後(のち)、この男夜(よ)に入り、月影をしのび、京中(きやうなか)にゆきて、美しき娘を盗みて、二三日も愛しては、又帰しぬ。これを不思議の沙汰(さた)して、暮(くれ)より用心して、いとけなき娘を門(かど)に出さず、都の騒ぎ大方(おほかた)ならず。昨日(きのふ)は六条(ろくでう)の珠数屋(じゆずや)の子が見えぬとて嘆き、今日は新町(しんまち)の椀屋(わんや)の子を尋ね悲しむぞかし。
 頃(ころ)は軒端(のきば)に菖蒲(あやめ)葺(ふ)く、五月の節句の、色めける、室町通(むろまちどほ)りの、菊屋(きくや)の何某(なにがし)のひとり娘、今七歳(しちさい)にて、そのさますぐれて、生れつきしに、乳母(うば)・腰元(こしもと)がつきて、入日(いりひ)をよける傘(かさ)さし掛けて、行くを見すまし、横取りにして、抱(いだ)きて逃ぐるを、「それ/\」と声をたつるに、追つかくる人もはや、形を見失ひける。(中略)その面影を見し人のいふは、「先(ま)づ菅笠(すげがさ)を着て、耳の長き女」と見るもあり。「いや顔の黒き、目の一つあるもの」と、とり/゛\に姿を見替へぬ。かの娘の親、いろ/\嘆き、洛中(らくちゆう)をさがしけるに、自然と聞き出(いだ)し、かの子を取り返し、この事を言上(ごんじやう)申せば、召し寄せられて、おもふ所を、御聞きあそばしけるに、只(ただ)何となく、小さき娘を見ては、そのままに欲しき心の出来(いでき)、今まで何百人か、盗みて帰り、五日三日は愛して、また親元へ帰し申すのよし、外(ほか)の子細(しさい)もなし。」

「北野のほとりに合羽(かっぱ)のこはぜを作って毎日を送り、一生をぼんやりとして、小さい家に一人で住んでいる男があった。
 都だから多くの慰みごともあるのに、この男は、まだ西も東もわからないほどの少女を集めて、少女たちの好きな玩具(がんぐ)を作り、これらに交じって自分も無邪気に一日中楽しんでいるうちに、後には人も新賽(さい)の川原(かわら)と名づけて、付近の子供たちはここに集まり、父母に会いたいと求めることもしないで遊んでいるので、生活に忙しいその親たちは、子供にかかる手を省くことができるので喜び、この男を仏のように言っていた。
 その後この男は、夜、月の光から身を隠して京の町中に行き、美しい娘を盗んで、二、三日ほどかわいがっては返していた。娘が急に見えなくなるのを不審なことだと評判して、人々は警戒して日暮れになると幼い娘を家の外に出さず、都の町の騒ぎは大変であった。昨日は六条の数珠屋(じゅずや)の子が見えなくなったといって嘆き、今日は新町の椀屋(わんや)の子がいなくなったので捜し悲しむ、というようなありさまであった。
 ちょうどその時は、家々の軒端(のきば)に菖蒲(しょうぶ)をふく五月の端午(たんご)の節句時分で、はなやかな呉服の町、室町通の菊屋某(なにがし)の一人娘が、今年七歳で、その姿は特に美しく生まれついており、彼女に乳母・腰元がついて夕日をさける傘(かさ)をさしかけて通って行くのを、かの男が見て、横から奪い取って、抱いて逃げた。乳母・腰元たちが、「それ、それ」と大声をあげたので、人々は追いかけたが、すぐに子盗人の姿を見失ってしまった。(中略)その姿を見た人が言うには、「まず、菅笠(すげがさ)をかぶり、耳の長い女」と認めた人もおり、「いや、そうではない。顔が黒く、目が一つある化物(ばけもの)だ」と言う者もおり、人によっていろいろとその姿を見違えていた。この娘の親は非常に嘆き、洛中(らくちゅう)を捜しまわったので、だんだんとわかってきて、この子供を取り返し、この事を町奉行所に申し上げると、奉行はこの男を出頭させて、彼が思っていることをお聞きになったところ、この男は、ただなんとなく幼い娘を見ては、そのままにその娘が欲(ほ)しいという気持がわいてきて、今まで何百人か盗んで帰り、五日、三日かわいがってまた親元に帰していましたという事で、別に他意はなかった。」



「蚤(のみ)の籠抜(かごぬ)け」より: 

「世をわたる万(よろづ)の事も不足なく、武道具(ぶだうぐ)も昔を捨てず、歴々(れき/\)の窂人(らうにん)、津河隼人(つがははやと)と申せしが、いかなる思ひ入れにや、下人(げにん)なしに只独(ただひと)り、すこしの板庇(いたびさし)を借りて住みけるに、十二月十八日の夜半(やはん)に、盗人(ぬすびと)大勢(おほぜい)しのび入りしに、夢覚(さ)め枕刀(まくらがたな)をぬき合はせ、四五人も切り立て追つ散らし、何にても物はとられず、沙汰(さた)なしにして、近所も起こさず済ましぬ。
 その夜(よ)また、同じ町はづれの紺屋(こんや)に夜盗(よたう)入りて、家をあらし、染絹(そめぎぬ)・掛硯(かけすずり)をとりて行くに、亭主(ていしゆ)鑓(やり)の鞘(さや)はづして出合ひけるに、七八人も取り巻き、主(あるじ)を切りこかし、思ふまま、諸道具(しよだうぐ)までを取つて行く。
 夜(よ)明けての御僉議(せんぎ)に、下々の申すは、「皆、髭男(ひげをとこ)の、大小を指してまゐつた」といふ。かかる折ふしかの窂人(らうにん)の門(かど)に、血の流れたる、世間より申し立て、さま/゛\の申し分けその証拠もなければ、是非なく籠者(らうしや)してありける。
 「昔はいかなる者ぞ」と、御たづねあるに、「この身になつて名はなし」と、うち笑つて申す。何ともむつかしき僉議(せんぎ)にて、年月(としつき)を重ね七年(しちねん)過ぎて、駿河(するが)の籠者残らず、京都の籠(らう)に引かるる事あり。
 又このうちにまじり、都の憂き住ひ、武運の尽きなり。あまた人はあれども、その身に科(とが)を覚えて、今更公儀(こうぎ)を恨みず、命を惜しまず。
 ある雨中(うちゆう)に、くろがねの窓より、幽(かす)かなる明(あか)りをうけ、蛤(はまぐり)の貝(かひ)にて髭(ひげ)を抜くもあり、塵紙(ちりがみ)にて仏(ほとけ)を作るもあり、色々芸(げい)づくし、独(ひと)りも鈍(どん)なる者はなし。その中に髪(かみ)白く巻き上がり、さながら仙人のごとくなるが、薄縁(うすべり)の糸にて、細工に虫籠(むしこ)をこしらへ、このうちに十三年になる虱(しらみ)、九年の蚤(のみ)なるこれを愛して、食物(じきもつ)には、我(わ)が太腿(ふともも)を食(く)はしける程に、すぐれて大きになり、やさしくもなつきて、その者の声に、虱は獅子踊(ししをどり)をする、蚤は籠抜(かごぬ)けする。悲しき中にも、をかしさまさりぬ。」

「生活に何一つ不自由なく、武士の諸道具もその昔仕官していた時のように持ち続けていた、素姓正しい浪人の、津河隼人(つがわはやと)という人がいたが、どういう考えからであろうか、下人も置かずただ一人の暮しで、この町の、小さい板庇(いたびさし)のそまつな家を借りて住んでいたが、十二月十八日の夜中に、盗人がこの家に大勢で忍び入ったので、隼人は眼を覚まし、枕もとの刀を抜き合わせ、四、五人も斬(き)り立て追い散らし、物品は何も盗まれなかったから、何も起こらなかったことにして、近所の人を起こして事件を話しておくということもしないですませておいた。
 その夜また、同じ町のはずれの染物屋に夜盗が押し入って、家の中を荒らし、染絹や掛硯(かけすずり)を盗んでゆくので、亭主が槍(やり)の抜身をもって立ち向かったが、盗人は七、八人で取り巻き、主人を斬り倒して、思うままに諸道具までを奪って行った。
 夜が明けてからの役人の取調べで、下男たちが言うには、「盗人たちは皆髭(ひげ)の生えた男で、大小をさして来ました」と言う。ちょうど同じ時に、かの浪人の家の入口に血が流れているのを世間の人々が訴えたので、浪人に夜盗の疑いがかけられ、浪人はいろいろの弁明をしたが、その証拠となるものがなかったので、しかたなく取調べのために牢屋(ろうや)に入れた。
 「昔はどのような者であったのか」と役人が尋問したが、浪人は「このような姿になっているのですから、名のる名前もありません」とうち笑って言った。どうにも判断のしにくい事件で、そのまま年月を過ごしているうちに、七年過ぎて、駿河の入牢者が、皆、京都の牢屋に移送されるということがあった。
 また、この入牢者たちとともに、都のつらい牢屋住いをするのは武運の尽きというものである。有力な知人がいたので、出牢のつてはあったのだが、自分にも落ち度があった事を知って、今更役人も恨まず、生命も惜しく思わなかった。
 ある雨の日に、鉄格子の窓からかすかにさしてくる明かりをたよりに、蛤(はまぐり)の貝を合わせて髭(ひげ)を抜く者もあれば、ちり紙細工で仏像を造る者もあり、入牢者がいろいろの芸尽しをしていたが、彼らのうちには一人として鈍才の者はいなかった。その中に、髪が白く巻き上がって、ちょうど仙人のような男がいて、薄縁(うすべり)の織糸で、細工に虫籠(むしこ)を作り、この中に十三年も生きている虱(しらみ)、九年になる蚤(のみ)を入れており、これをかわいがって、食べ物には、自分の太腿(ふともも)の血を吸わせている間に、非常に大きくなり、やさしいことには彼になついて、その者の声で、虱は獅子踊(ししおど)りをし、蚤は籠抜(かごぬ)けの芸をした。これを見ていると悲しい自分の境遇のうちにもおかしさがまさって愉快になった。」



「鯉(こひ)の散らし紋」より: 

「この池むかしより今に、水のかわく事なし。この堤にひとつ家(や)をつくりて、笹舟(ささぶね)にさをさいて、内介(ないすけ)といふ猟師、妻子(さいし)も持たず只(ただ)ひとり、世を暮らしける。
 つね/゛\取り溜(た)めし鯉(こひ)の中に、女魚(めす)なれどもりりしく、慥(たし)かに目見じるしあつて、そればかりを売り残して置くに、いつのまかは、鱗(いろこ)にひとつ巴(どもゑ)出来(でき)て、名をともゑとよべば、人のごとくに聞きわけて、自然となつき、後(のち)には水をはなれて、一夜(ひとよ)も家(や)のうちに寝させ、後(のち)にはめしをもくひ習ひ、また手池(ていけ)にはなち置く。はや年月(としつき)をかさね、十八年になれば、尾かしら掛けて、十四五なる娘のせい程になりぬ。
 あるとき内助(ないすけ)に、あはせの事ありて、同じ里より、年がまへなる女房を持ちしに、内介(ないすけ)は猟船(れうせん)に出(いで)しに、その夜(よ)の留守に、うるはしき女の、水色の着物(きるもの)に立浪(たつなみ)のつきしを上に掛け、うらの口よりかけ込み、「我は内助殿(ないすけどの)とは、ひさ/゛\のなじみにして、かく腹には子もある中なるに、またぞろや、こなたをむかへ給ふ。このうらみやむ事なし。いそいで親里(おやざと)へ帰りたまへ。さもなくば、三日のうちに大浪(おほなみ)をうたせ、この家をそのまま池に沈めん」と申し捨てて、行方(ゆきがた)しれず。
 妻は内介(ないすけ)を待ちかね、おそろしきはじめを語れば、「さらさら身に覚(おぼ)えのない事なり。大(おほ)かたその方(はう)も合点(がつてん)して見よ。このあさましき内助(ないすけ)に、さやうの美人、なびき申すべきや。(中略)何かまぼろしに見えつらん」と、又夕暮(ゆふぐれ)より、舟さして出(いづ)るに、俄(にはか)にさざ浪(なみ)立つてすさまじく、浮藻中(うきもなか)より、大鯉(おほごひ)ふねに飛(と)びのり、口より子の形なる物をはき出し失せける。やう/\にげかへりて、生洲(いけす)を見るに、かの鯉はなし。
 「惣(そう)じて生類(しやうるい)を深く手馴(てな)れる事なかれ」と、その里人(さとびと)の語りぬ。」

「この池は昔から今にいたるまで、水の干上がるということがなかった。この堤の上に、内助という漁師が一軒家を造って、小さい船に棹(さお)さして日を送り、妻子ももたずただ一人住んでいた。
 常日頃取(と)り溜(た)めていた鯉(こい)の中に、雌(めす)であるけれども元気がよく、はっきりと目印がついているのがあって、それのみを売り残しておくうちに、いつの間にか鱗(うろこ)に一つ巴(どもえ)の紋ができて、名をともえとよぶと、人間のように聞きわけて、自然となつき、後には水から出、一夜中でも家の中に寝させることができ、後には飯をも食べる習慣がつき、あるいは生簀(いけす)にも入れ置いていた。そのうちにはやくも年月がたち、十八年になると、頭から尾までが十四、五歳の娘の背丈(せたけ)ほどの大きさになった。
 ある時、内助に縁組のことがあって、同じ村から、年のいった女房をもらった。内助は漁をするために船に乗って出たところ、その夜の留守の間に、美しい女が水色の立波模様のついた着物を上に着て、裏口から駆け込み、「私は内助殿とは長らく契りを結んでいて、このように腹には子もある仲ですのに、またしてもあなたを家に入れられました。この恨みはちょっとやそっとではありません。急いで親元へお帰りなさい。そうしなければ、三日のうちに大波をあげさせてこの家をこのまま池に沈めてしまいます」と言い捨てて、行方知れずになった。
 妻は内助が帰ってくるのを待ちかねて、恐ろしかった事情(いきさつ)を語ると、内助が言うには、「まったくそのようなことは身に覚えのないことだ。だいたい、おまえも考えてごらん。この貧乏な内助にそのような美人が恋い慕ってくるものか。(中略)何かが幻となって現われたのではないか」とまた、夕暮れから船に棹(さお)さして出ると、にわかに小波が立って荒れだし、浮藻(うきも)の中から大鯉(おおごい)が船に飛び乗り、口から子の形のものを吐き出して去って行った。内助はやっとの思いで逃げ帰って生簀(いけす)を見ると、かの鯉はいなくなっていた。
 「すべて、動物をあまり深くかわいがってはいけない」と、その村の人たちが語った。」








鯉の恋は人の外(ほか)なり。








こちらもご参照ください: 

『武道伝来記』 井原西鶴 作/横山重・前田金五郎 校注 (岩波文庫)













































『武道伝来記』 井原西鶴 作/横山重・前田金五郎 校注 (岩波文庫) 

「奥(をく)の海には、目なれぬ怪(け)魚のあがる事、其例(ためし)おほし、御深草院(ごふかくさのゐん)、寶治(ほうぢ)元(ぐはん)年三月廿日に、津輕(つがる)の大浦(うら)といふ所へ、人魚(ぎよ)はじめて、流(なが)れ寄(より)。其形(かた)ちは、かしら、くれなゐの鷄冠(とさか)ありて、面(をもて)は美(び)女のごとし。四足(そく)、るりをのべて、鱗(いろこ)に金色のひかり、身に、かほりふかく。聲は、雲萑(ひばり)笛のしづかなる、音(こゑ)せしと、世のためしに、語(かた)り傳(つた)へり。」
(井原西鶴 『武道伝来記』 「命とらるゝ人魚の海」 より)


『武道伝来記』 
井原西鶴 作 
横山重・前田金五郎 校注
 
岩波文庫 黄/30-204-7 


岩波書店 
1967年4月16日 第1刷発行 
1977年6月10日 第6刷発行 
442p 別丁口絵(モノクロ)1葉 
文庫判 並装 
¥400(☆☆☆☆)
 


本書「凡例」より: 

「本書は、岩波文庫西鶴本校訂委員会の方針に従って、「武道伝来記」を翻刻し、それに脚注を加えたものである。」
「本書の底本には赤木(横山)文庫本を使用した。原表紙は深縹色無地、製本寸法は、竪二六・三糎、横一七・九糎。ただし題簽は完全なものはない。それゆえ、題簽は、天理図書館本と岩瀬文庫本によって補って掲げた。」
「翻刻にあたっては、できるだけ原本の面目を保ちつつ、かつ読みやすい本文とするように努めた。」
「挿絵は、原本の場合、各章の途中に出してあるが、今はその章の適当な個所に入れた。なお挿絵については、天理図書館本を使用したところがある。」
「序文・刊記は特に凸版にして掲示した。」
「本書の脚注は、最小限度の簡単な説明を出したにすぎない。それゆえ、巻末に補注欄を設け、脚注の説明を補足しておいた。」
「巻末に、簡単な解説を施した。」
「本書の草稿を作製したのは、主として前田である。横山はこれを清書し、すこし増補した程度である。」



「補注」は二段組。本文中に挿絵図版32点、その他図版2点。
敵討ちの話です。







目次: 

凡例 (横山重・前田金五郎) 

武道伝来記 
 巻一 
  㐧一 心底(しんてい)を彈(ひく)琵琶(びは)の海(うみ)/形(かたち)も情(なさけ)も同(をな)じ美童(びどう)の事 
  㐧二 毒〓(漢字:くさかんむり+「未」)(どくやく)は箱入(はこいり)の命(いのち)/人質(ひとじち)は夢(ゆめ)の内藏(うちぐら)の事
  㐧三 〓(漢字:「口」+「參」)嗒(ものもうどれ)といふ俄正月(にはかしやうぐはつ)/〓(漢字:うかんむり+「取」)後(さいご)はしれて女郎買(ぢよらうかい)の事  㐧四 内儀(ないぎ)の利發(りはつ)は替(かはつ)た姿(すがた)/せはしき中に預(あづ)け物(もの)の事 
 巻二 
  㐧一 思(をも)ひ入 吹(ふく)女尺八(をんなしやくはち)/落鞠(おちまり)に色(いろ)見そむる事 
  㐧二 見ぬ人(ひと)㒵(がほ)に〓(漢字:あめかんむり+「月」)(よひ)の無分別(むふんべつ)/熊野(くまの)に夢(ゆめ)の面影(をもかげ)出る事 
  㐧三 身袋(しんだい)破(やぶ)る落書(らくがき)の團(うちは)/水浴(みづあび)せのじや/\馬(むま)作(つく)る事 
  㐧四 命(いのち)とらるゝ人魚(にんぎよ)の海(うみ)/忠孝(ちうかう)しるゝ矢(や)の根(ね)の事 
 巻三 
  㐧一 人差指(さしゆび)が三百石(こく)が物(もの)/小道具賣(こだうぐうり)に替姿(かへすがた)の事 
  㐧二 按摩(あんま)とらする化物屋敷(ばけものやしき)/うてど手(て)のない小鞁(こつゞみ)の事 
  㐧三 大虵(だいじや)も世(よ)に有(ある)人が見た樣(ためし)/〓(漢字:たけかんむり+革(しなへ)は當(あた)り眼(まなこ)の事 
  㐧四 初茸狩(はつたけがり)は恋草(こひぐさ)の種(たね)/義理(ぎり)の包物(つゝみもの)心のほどくる事 
 巻四 
  㐧一 太夫格子(たゆふかうし)に立名(たつな)の男(をとこ)/形(かたち)は埋(うづ)めど武士(ぶし)は朽(くち)ざる事 
  㐧二 誰(たれ)が捨子(すてご)の仕合(しあはせ)/腰本(こしもと)の久米(くめ)情(なさけ)に身の果(はつ)る事 
  㐧三 無分別(むふんべつ)盤(は)見越(みこし)の木登(きのぼり)/敵(かたき)も一たび主(しゆ)人にかたれぬ事 
  㐧四 踊(をどり)の中(なか)の似世姿(にせすがた)/舌(した)の劔(つるぎ)に命(いのち)をとる事 
 巻五 
  㐧一 枕(まくら)に殘(のこ)る〓(漢字:くさかんむり+「未」)(くすり)違(ちが)ひ/法師(ほうし)むかしに歸(かへ)る〓(漢字:「月」+「代」)(さかやき)の事 
  㐧二 吟味(ぎんみ)は奥嶋(おくじま)の袴(はかま)/意氣地(いきぢ)を書置(かきおき)にしる事 
  㐧三 不断(ふだん)に心懸(こゝろがけ)の早馬(はやむま)/なげきの中(なか)に嶋臺(しまだい)出(いだ)す事 
  㐧四 火燵(こたつ)も歩行(ありく)四足(よつあし)/鉢敲(はちたゝき)は我國聲(わがくにごゑ)の事 
 巻六 
  㐧一 女(をんな)の作(つく)れる男文字(をとこもじ)/姉(あね)より妹(いもと)が奉公振(ほうこうぶり)の事 
  㐧二 神木(しんぼく)の咎(とが)めは弓矢八幡(ゆみやはちまん)/同行(どうぎやう)三人 若衆(わかしゆ)順礼(じゆんれい)之事 
  㐧三 毒酒(どくしゆ)を請太刀(うけだち)の身/神鳴(かみなり)に月代(さかやき)差合(さしあひ)の事 
  㐧四 碓(いしうす)引(ひく)べき垣生(はにふ)の琴(こと)/鴛鴦(ゑんあう)の劔(つるぎ)衾(ふすま)をとをす事 
 巻七 
  㐧一 我(われ)が命(いのち)の早使(はやづかひ)/灸(きう)居(すへ)ても身(み)のあつきを知(しら)ぬ事 
  㐧二 若衆盛(わかしゆざかり)盤(は)宮城野(みやぎの)の花(はな)/義理(ぎり)に身捨(すつ)るはほめ草(くさ)の事 
  㐧三 新田原藤太(しん たはらとうだ)/百足(むかで)枕神(まくらがみ)に立(たつ)事 
  㐧四 愁(うれへ)の中(なか)へ樽肴(たるざかな)/敵(かたき)うたで横手(よこで)を打(うつ)事 
 巻八 
  㐧一 野机(のづくえ)の煙(けふり)くらべ/身はひとつを情(なさけ)はふたつの事 
  㐧二 惜(をし)や前髪(まへがみ)箱根(はこね)山颪(やまおろし)/涙(なみだ)の時雨(しぐれ)に木綿合羽(もめんがつぱ)の事 
  㐧三 幡州(ばんしう)の浦浪(うらなみ)皆(みな)歸(かへ)り討(うち)/雪(ゆき)の夜(よ)鷄(にはとり)思ひもよらぬ命(いのち)の事 
  㐧四 行水(ぎやうずい)でしるゝ人の身(み)の程(ほど)/伊賀(いが)の上野(うへの)にて打治(うちをさ)めたる刀箱(かたなばこ)の事 

補注 
解説
 



◆本書より◆ 


「毒〓(漢字:くさかんむり+「未」)(どくやく)は箱入(はこいり)の命(いのち)」より: 

「小梅(こむめ)といへる女、お座敷(ざしき)に行て、野沢(のざは)どのゝ帶を、御かへしあそばされませいと。ひろき口をすぼめて、遠慮(えんりよ)もなくちかくよれば。折ふしよく、此女もうつくしげに見えて。此帶(をび)、縁(えん)のむすびとなつて、ちよろりと(脚注:「ちょっとの間に」)、人の恋(こひ)をぬすみける。
其後は、おのづから奥(をく)に入て、御情(なさけ)つのり。我になりて(脚注:「わがままになって。つけあがって。我は「が」と訓む」)、是(これ)をにくまぬ人はなし。され共、小梅(むめ)の女、旦那(だんな)の御氣(き)に入事、是非(ぜひ)なく。樣(さま)(脚注:「「殿」より敬意が重い」)つけぬばかり、主(しう)あしらひになりぬ。次㐧にうるさく思ふうちに、心入(脚注:「心底」)のあしき事あらはれ。又〓(漢字:うかんむり+「取」)前(さいぜん)の野沢(のざは)に移(うつ)りかはらせ給ふを、小梅(むめ)ふかくそねめど。
さもしからねば、獺(をそ)のたはれ(補注より:「こゝは「枕を交す」こと、すなわち、情交の意である。本文は、橘山刑部と、野沢とが、獺のたわむれるように、いちゃついては、枕を交すたび毎に、愛情が深くなっての意である。」)のごとく。浪(なみ)の瀨枕(せまくら)を、かはすたび毎(ごと)に。御不便(びん)(脚注:「愛情。不便が古来の正用字」)深(ふか)く成て、外なく、此女に惱(なすま)せ給へば(脚注:「惚れこまれたので」)。小むめ瞋恚(しんい)の猛火(まやうくは)、燃(もへ)やまずして、神木(しんぼく)に釘(くぎ)をうち(脚注:「下の人像云々と共に調伏の咒い」)。人像(ひとがた)を作(つく)りて、山伏(ぶし)に祈(いの)らすれど。元來(もとより)まことならねば。仏神(ぶつじん)是をうけ給はず、かへつて其身をとがめ給ふ。
なを執念(しうねん)おこつて、野沢が命をうしなはん惡(あく)事をたくみ。有時、菓子(くはし)に斑猫(はんめう)の大毒(どく)(脚注:「カンタリス」)をしこみて、野(の)沢のかたへおくりけるに。此山吹餅(やまぶきもち)(補注より:「この餅の名は諸本に出ているが、どういう製法のものか、よく分らない。」)を、ひとりはひらかずして。女﨟(ぢよらう)中間をよび集(あつ)め、茶(ちや)事して、是をもてなしけるに。
其夜(よ)に入て、血(ち)をはくも有。又は胸(むね)をいたませ、あるひは腹(ふく)中燃(もへ)て、うき目を見せて、此難義(なんぎ)かなしく。彼是(かれこれ)、七人の女房(にうばう)たち、同じ枕(まくら)に命をはりて。小梅壱人生殘(いきのこ)るを、穿鑿(せんさく)しけるに。因果(いんぐは)をばのがれず。其(その)毒〓(漢字:くさかんむり+「未」)(どくやく)の事、終に(つゐに)あらはれ出。此科(とが)の果(はた)す所(ところ)、牛割(うしざき)(脚注:「牛二頭または四頭に罪人の両足をくくり、牛を走らせて身体を引裂く酷刑」)にしてもあきたらずと。
松(まつ)の木の箱(はこ)をさして(脚注:「組立てて」)、目口の所に、穴(あな)をあけて、彼女(かのをんな)を入(いれ)、毒害(どくがい)にあひし、女房(にうばう)どもの親兄㐧(をやきやうだい)を、よびよせ、恨(うら)みを晴(はら)すためとて、此箱(はこ)の蓋(ふた)より。身にこたゆる程の、大釘(くぎ)をうたせける。歎(なげ)くかた手に、惡(にく)やと打(うち)ぬる者もあり。かへらぬむかしと、うたぬもあり。身うちに、あき所(ど)(脚注:「すきま」)もなくして、人の命もつよし。九日十日までは、
慥(たしか)に息(いき)のかよひ、十一日の暮(くれ)かたに、おはりぬ。死骸(しがい)は野(の)に埋(うづ)みて、其惡名(あくみやう)は世(よ)にのこれり。
此小梅(むめ)、生國(こく)はむさしの熊谷(くまがへ)の者なりしが。㐧(をとゝ)に九藏(ぞう)とて、わたり奉公(ぼうこう)(脚注:「あちこちと主家を替えてする奉公」)して、淺草(あさくさ)に有しが。此事聞て、姉(あね)が科(とが)の程は、外になして(脚注:「問題にせず」)、菟角(とかく)、かたきは、主人形部(ぎやうぶ)と思ひ定(さだ)め、
はる/゛\の陸奥(みちのく)にくだり。里の草(くさ)の屋に身をかくし。旅(たび)がけの商人(あきんど)(脚注:「行商人」)と申なし。小間(こま)物のいろ/\を仕込(しこみ)。笈箱(をひばこ)に、心覚(をぼ)えの刀(かたな)を入。屋かた町(脚注:「武家屋敷町」)に出入。いつぞの程に、刑部(ぎやうぶ)殿の下臺(だい)所(脚注:「奉公人の炊事をする台所」)にも、自由(じゆう)にまいり。心をくだき、ねらひぬれ共、たよるべき首尾(しゆび)もなくて、程(ほど)ふりけるこそ口おしけれ。
其秋冬(あきふゆ)もくれ過(すぎ)て、明る年(とし)の二月のすゑに。花畠(はなばたけ)の菊(きく)、植(うへ)かへらるゝとて。中間壱人つれられ、萩垣(はぎがき)の外(ほか)に、出られしを見届(とゞ)け。此ときうたずは、又の時節(じせつ)もあらじと、手ばしかく(脚注:「すばやく」)、くだんの刀(かたな)を取出し。しのびて、うじろ(脚注:「「うしろ」の誤」)に立まはり。名乘(なのり)もかけず打太刀(たち)、夕日にうつりて、かゝやく(脚注:「輝く。当時は清音」)影(かげ)におどろき、よげ(脚注:「避け。当時は濁音」)たまへば。すまた(脚注:「股」)へ切(きり)付し間(ま)に、脇指(わきざし)ぬきあはせ、打つけられしに。鬢先(びんさき)切れながら、かなはじとや、にげて出しが。
折ふし、市丸(いちまる)殿、御乳(おち)の人抱(いだ)き參らせ、廣庭(ひろには)に出しをうばひ取。ひつさげて、米藏(こめぐら)のうちにかけ込(こみ)。せつなきまゝに、人質(じち)をとりて。此おさなき人に、すでにうきめを見せんとす。此めのと(脚注:「御乳の人」)かなしくて、かけいらんとする時。おのれら、あたりへちかよらば。此世忰(せがれ)(脚注:「子供。世忰は慣用字・忰は悴の俗字」)をさしころすと、胸(むね)に劔(つるぎ)をさしあてければ。
さながら(脚注:「そのまま。全然」)、そばへも近付(ちかづき)えず。遠(とを)くより身をひかへ、手をあはして、自(みづから)と取(とり)かへて給はれと、もだゆれど。其断(ことは)りも聞(きゝ)わかばこそ(脚注:「全く聞きわけない」)、又其まゝにころしもせず。おのれのがるべき所にあらず。天命(てんめい)つきて待(まち)ける所に、家(け)來の面〃(めん/\)いづれも、すゝみてかけいらんとするを。形部かけつけ給ひ、をしとゞめ。しばらく方便(てだて)を、めぐらし給ふうちに。
家(か)中一番の、鉄炮(てつぽう)(脚注:「火繩銃。当時は鉄炮が普通表記」)の上手、後藤(ごとう)流(りう)左衞門が二男(なん)、森(もり)之丞(ぜう)とて、十五歳なりしが。是を聞より、小筒(づゝ)(脚注:「小銃」)に、鎖玉(くさりだま)(脚注:「二つの玉に穴を開け、二・三寸の長さの鎖で繋いだもの」)を仕込(しこみ)、火鋏(ひばさみ)(脚注:「火繩銃の火繩を支える金具。点火した火繩をはさみ、火蓋を切ったことを、「火鋏切って」と言った」)切て、かけ寄(よる)を。皆〃(みな/\)、引留(とめ)、爰(こゝ)は大事の所と、いへば。しそんじたらば、それまでの命、手ぬるき評儀(ひやうぎ)、此時にまつべきかと。
風通(かざどを)しの窓(まど)より、目(め)あてを定(さだ)め、打けるに。劔(つるぎ)持たる腕首(うでくび)を、あやまたずして、打落(をと)し。それと、いふ聲に、をの/\、一同(どう)にかけ入。まづ市丸殿を、子細(しさい)なく抱(いだき)とり、あやうき命を、たすけ參らせ。跡(あと)にて、九藏は切くだかれ、形(かたち)は當座(たうざ)に(脚注:「たちまちの内に」)なかりき。」








「新田原藤太(しんたはらとうだ)」より: 

「秋の日のならひ、程なく暮(くれ)て、すぐに、其假〓(漢字:「莚」+「月」)(かりぶき)に、一夜(や)の袖枕(そでまくら)、夢ともなく、現(うつゝ)共あらず、其長(そのたけ)、十丈(でう)ばかりの百足(むかで)、血射塗(ちみどろ)なるが、夜光(やくはう)の玉(たま)(脚注:「両眼をさす」)をかゝやかし。善太郎が、枕本(まくらもと)に、たゝずみ、我は、汝(なんぢ)が生國(しやうこく)、棒(ぼう)の津(脚注:「鹿児島県川辺郡坊津町。慶長以前栄えた港」)の片山陰(かたやまかげ)に、住者(すむもの)也。其方(そのはう)がねらふ敵(かたき)は、攝津(せつつ)の國、古曾根(こそね)(脚注:「大阪府高槻市古曾根」)といふ所に、あり/\と御告(つげ)、御かたち、消(きゆ)るが如(ごと)く、見え給はず。」













こちらもご参照ください: 

『武家義理物語』 井原西鶴 作/横山重・前田金五郎 校注 (岩波文庫)





















































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プロフィール

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、土方巽、デレク・ベイリー、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。
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